| こと座（琴座）・Ｌｙｒａ（Ｌｙｒ） |
| ２０時南中 | ８月２９日 |
| 南中高度 | ９０度 |
| 面積 | ２８６゜．５ |
| 肉眼星数 | ５２個 |
| 設定者 | トレミー |
| 夏の夜空を飾る琴座は、様々な意味で有名な星座である。主星ヴェガは、七夕伝説の織姫星であり、またこの琴の持ち主だったギリシャ神話の音楽家オルフェウスの悲しい神話も有名である。α星ヴェガは、白い色の０等星であり、ε星とζ星とで、小さな三角形を作り、更にζ星とδ星、β星、γ星が平行四辺形を作り、琴の形を成している。また、β星とγ星の間にはＭ５７・環状星雲がある。これは、リング状の美しい星雲で、小望遠鏡でもその姿を見る事ができる。さて、琴座の神話としては、オルフェウスの事をお話ししたい。 |
| （神話） オルフェウス、川の流れを止める |
| オルフェウスは、太陽神であり、音楽の神でもあるアポロンと芸術を司る９人の女神（ムーサ）の一人、カリオペの間に生れ、両親から受け継いだ音楽の見事さは並ぶものが無く、彼が竪琴を弾くと、河の流れが止まり、猛獣も獲物を追うのを止めて聞き惚れたのである。 彼は樹木の精であるエウリュディケと夫婦となったが、それから間もないある日、エウリュディケは、毒蛇にかまれ命を落としてしまった。オルフェウスは、悲嘆にくれながらも、ある日冥界への入り口を見つけると、妻を返してもらうため冥界への長い階段を下りて行ったのである。地獄の川の渡し守、カロンも地獄の番犬ケルベロスもオルフェウスの奏でる音楽に聞き惚れて、生者であるオルフェウスが通る事を許した。そして、冥府の王ハデスの前で、オルフェウスは妻への思いを音楽に託して語り、それは峻厳なハデスの心さえ動かしたのである。ハデスはエウリュディケを地上に戻す事を許したが、決して地上に戻るまでは後ろから来るエウリュディケの方を振り向いてはいけない、と言う条件を付けた。 ＊ ＊ ＊ オルフェウスは、後ろからエウリュディケの気配が来るのを感じながら、地上への長い階段を上った。やがて、地上の光が前方に見え、鳥のさえずりが聞こえてきた。オルフェウスは、地上へあと一歩と言うところで気を許して、後ろを振り返ってしまったのである。だがエウリュディケは、まだ完全に地上に戻りきっていなかった。あっと言う間にエウリュディケの姿はオルフェウスの目の前から消えてしまった。 自分の不注意から、エウリュディケを再び失ってしまったオルフェウスは、悲嘆の余り、野を山をさまよったあげく、トラキアという地で、行き倒れのまま死んだ。亡骸は愛用の琴とともに葬られたが、そこからはまだ悲しい歌が聞こえ続けたのである。それを伝え聞いた女神ヘラは、かつて自分がゼウスの浮気で嫉妬に身も心もすさんでいた時、オルフェウスが音楽を奏で慰めてくれた事を思い出した。ヘラは、その事に報いるため、伝令神ヘルメスに命じてさまよっているオルフェウスの魂をオリンポスに連れてこさせ、ハデスに頼み、エウリュディケの魂もオリンポスに召喚したのである。 ヘラの計らいで思いがけず再会できた二人は、そのまま、エリュシオンの野で永遠の命を与えられ、今度こそ幸福に暮らした、と伝えられている。そして、オルフェウスの琴は天に昇り、琴座となった。主星ヴェガは、その琴にはめ込まれたサファイアと言われている。今でも夏の静かな夜、夜空に向かって耳を澄ますと、エリュシオンの野で、オルフェウスがエウリュディケと共に奏でる音楽が聞こえて来るのである。 |